ドライバー数を増やしながら分かったこと

シングルドライバ、デュアル、トリプル、5ドライバ、9ドライバとドライバ数を増やしながら作ってきたから色々分かったことがある。

★これまでの経緯
Knowles Rab-32257シングルでドライバーの性能に感動
→32257+FK (Minerva Classico) 2ドライバ
→32257+TWFK30017 (Minerva Nuovo) 3ドライバ
→32257×2+Rab-32033+TWFK (Minerva Grosso) 5ドライバ
→32257×2+32033+TWFK×2+DTEC30008 (Minerva Tutti) 9ドライバ

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(もう、なんかね、作る方が楽しいよね、聴くよりも。笑
ドライバ構成考えてどうやってチューニングしようかなとか、そういうのを考えてる時が一番楽しい。)

まず、32257は単発で十分バランスが良く、雑踏や交通機関や寝ホンで使うなら必要にして十分な音質。低音がよく出るのも外で使うのには必要。高音は13kHz以上でがた落ちするので、鳴り物のキラキラ感とかは物足りないけれど、聴き疲れと難聴の原因になる3-5kHzのピークも問題の無いもので安心して使える。

★この物足りない高音を補完するためにTWFKを追加。最初FKを追加したら32257の音色のままに高域解像度が良くなった。さらにWBFK部を追加すると一気にハイレゾ対応するかのような高解像度になった。32257+TWFKトリプルドライバーで、この時点でかなり完成された音と感じた。ソースを選ばず現代的に鳴らせるから。

★ところが何となく多ドラが作りたくなり、32257と32033を増やして5ドライバとし、音のバランスをチューニングしてやると音数が圧倒的に増え、古楽のような複弦楽器を何台も使うようなソースでは倍音と弦の響きがよりリアルになり、アコースティックソースなら多ドラは正義と感じた。

こうなると欲が出て、「フルオケのトゥッティをスピーカーで聴いているかのような臨場感で鳴らしたい」と思った。
ドライバー数をさらに増やそう。。

ポータブルアンプを使えよ、と言う声が聞こえてきそうだけれど、フルオケはS/Nが命で、手持ちのヘッドホンアンプはポータブルも据え置きも全て真空管アンプの現状ではバイアス電流故のサーノイズと熱雑音とインピーダンスの不一致が甚だしく、多ドライバの高感度イヤホンなど全く使えない。。
デジタルアンプのイヤホン専用ポタアンが欲しい。

そもそもiPod touchiPhoneのデジタルアンプICはかなり優秀である。クリアで高音がカリッとしている。


ここのサイトの性能を引用するなら、iPhone5の段階でTHD+N 0.003134% ダイナミックレンジが92dBある。F特もハイレゾ対応していないけれど20kHzまではフラット。
アンプはきちんと増幅の仕事をしてくれれば良い、とにかくスピーカーであるイヤホンが大事。

そもそもBAドライバーで作るカスタムイヤホンは周波数特性ではハイレゾ対応出来るわけもないのは有名。
だけどハイレゾ音源を聴いてみりゃちゃんとそれなりに鳴らすんだから。
ハイレゾ音源のダイナミックレンジが余裕を持って鳴らせるだけでもだいぶ違う。



★思い切ってシェルに詰め込める限界9ドライバにした。
ドライバー数が多くなると、自分でどういう音にしたいのか考えてやらないと音がとっ散らかることになる。
TWFKを2個積み込むのに負けない程度の低音の量感を確保しないとフルオケの低音楽器の迫力が出なくなる。低音の量感を出すにしても篭もったらアウト。

こうなるとカナル先端を何処にするか、音響フィルターは何を選んで何処に配置すべきか、悩みどころが増える。カナルの材質、先端の形状、かなりデリケートな問題が出てくる。
メーカーなら何個も試作して時間をかけてチューニングするところ。
VisionEarsのラッパ状のカナル、K10のすり鉢カナルなんかがそうだし、音響フィルターの位置なんか各社各モデルでバラバラ。

しかし、両耳のドライバー代が44000円となると個人レベルでは試作をいくつも作ることなど無理。
ある程度の当てを付けて組み上げて後々リバイスしていくしかない。不満がたまって爆発したらリシェルするつもりで。


★★完成した9ドライバを聴いてみた。
ドライバーが増えて行くにつれ音と音の隙間が埋まり、音の粒が滑らかになり、豊かな響きになった。この音の隙間が埋まっていく過程を聴かなかったら9ドライバの音にはかなり面食らったかも知れない。

最初は音数が多すぎて脳が処理しきれない。
豊かな響きの中に高解像度があって、細かい音は当然NuovoやGrossoより出ている。だけど音に角張ったところはないので、音量を上げてもしんどくないうるさくない。高解像度をうたう高音が神経質なチューニングとはまるで対極にある。なんだこれは。

しかも、どういうわけかDTECには4700Ωの完全にウーファー用の黄色ダンパーを取り付けたのに、女声に艶が出た。
これ、実は自作スピーカーでも経験済み。サブウーファーを導入したらソプラノが艶やかになる。スーパーツイーターを使うと男声が凄く良くなる。
音響の不思議。

スマホゲームのBGMとか音源の質が知れていても嫌味な出音にはならないし、音源が生楽器なら何処までも豊かにならすし、コンプのかかったロックなんかの音源でも役不足感は否めずとも不機嫌にはならない。
むしろ、古いオルタナティブなんて懐かしいような感情に訴えるような音の鳴り方で学生時代とか遠く過ぎ去りし時間を引っ張り出されてブルーになる。何だこのイヤホン。笑

美音で芳醇で不得意な音源は無さそうな懐の深さを感じる。
ジャズのスイングは凄く良くても、ダイナミックドライバのお得意なクラブサウンドやDJホンみたいなバキバキのビートは無理。
もちろん、決してモニタリングホンではない。

まあ、お金はかかったけれど、作って良かった、9ドライバ機です。
最初、脳味噌がイヤホンについて行くのに2-3日かかるけれど。笑

※聴覚の生理的な音の分離の弁別限界とか、音響心理学的な観点から考えても、9-10ドライバくらいが多ドライバの限界じゃないかと思う。